アイドルとアニソンの融合、の話。

 NHK石原プロデューサーが、1月下旬に発売されたアニメ音楽誌「リスアニ」でのインタビューで、日本レコード協会の幹部の話として語ったところによると、2010年のセールスにおいて、シングルの売り上げは前年比でプラスに転じたそうです。もちろんその牽引力となったのはアイドル、特に嵐とAKBですけど、もう一つの要因はアニソンなのだそうです。
 アイドルは新世代勢力の台頭もあり今年も活気づくことは確実視されています。その一方で「アニソンは成熟してしまっている」と語っているのです。現実として歌い手が固定されている感じは確かかもしれません。最近はアニソンのフェスも増えていますが、その出演者が固まってしまっているというのもわからなくはないところです。
 石原Pはこの打開策の一つとして「アイドルとアニソンの融合」ということを提げています。例えばこれらのフェスにアイドル、石原Pは例として渡り廊下走り隊を挙げていますけど、そういうアイドルが出てもよいのではないかとも言います。現実に曲調が似かよっているところもあるでしょうし、アニメで流れればファンを獲得できるかもしれません。
 しかし、この2ジャンルが融合していない例として、スフィアとAKBのライブをそれぞれ見て感じたファンの気質の違いということを挙げています。その例とは、一つはAKBのライブだとほとんどの客はサイリウムを持っているけど、その中にウルトラオレンジを使う人はいないということ。もう一つはAKBのファンはイントロがBPM150くらいの曲であれば確実にMIXを打つけど、スフィアのファンはそういう曲でも打たないということです。
 ここの部分の発言を引いてみます。

石原 別にどちらが良い悪いってわけじゃないけど、もうちょっとお客さんが混ざってもいいのじゃないかなって。スフィアとAKBならもっとファンが被っていても良さそうなのに・・・・・・

 ファンが被っているところは多分にあると思います。実際自分のフォロワーさんの中には両方の現場に行く人もいます。ではなぜそういうことが起きないのか。それは、それぞれの流儀を知っているからではないでしょうか。無理に自分たちの流儀を押し付けるような真似をしない。だからそういうこともしない。
 事実、アニソンの盛り上がりを受けて、ハロプロの現場にウルトラオレンジを持ち込んで折った人もいたそうです。けれど、定着しなかった。それはその場の流儀を受け入れただけであり、定着しないからといって、ファンが興味を持っていないというわけではないと思います。
 むしろ、石原Pの論調だと、スフィアのライブでもMIXを打て、と言っているようにとられるのではないだろうかという懸念が生じます。インタビューの中でMIXを打つといわれているももクロも、自分の知る限りでは俗に「ももクロMIX」と呼ばれている「怪盗少女」の間奏で打つものしか見かけないですし、ハロプロにいたっては全くと言っていいほどMIXは使わないわけです。アイドルでもこれだけの違いがあるわけです。だから、アイドルの基準ではなく、AKBの基準になってしまうんですけど、それをアニソンにも強要するのは変じゃないかという意見は自分だけではないと考えますが、どうでしょうか。
 作法とかそういうものはまわりで見るなりして学べばいいわけであって、お互いの世界観は尊重すべき。騒ぎたいだけの人は嫌われる。それはアイドルもアニソンも関係ありません。そういう人は自分も来てほしくないです。
 それ以上に、聞き手の富田氏がいうこの観測は到底受け入れがたい。

 今年はスフィアの現場もカオスになりそうですよ。古参のファンと新規のファンで対立が起こったり、サイリュームのルールも変わるかもしれない

 富田氏はそういう現場をスフィアに望んでいるのでしょうか?
 私は絶対に嫌ですが。

 「ももクロとかまってちゃんが対バンをする時代なんだ、それがスフィアだっていいじゃないか」という意見は筋が通っています。ジャンルの壁を超えたいろいろな価値観を提供したいというのが、そもそも「ももってちゃん」を企画したHMVの意図なわけです。アニソンにもそういう場所を提供したいと考える石原Pには現状に対する危機感があるのでしょう。ただ、それは作り手側の主張であり、受け手がどう受け取るか、それは受け手が決めるものです。「ももってちゃん」だって評価はバラバラです。
 受けて側にも「アウェイではなく、ホームをたくさん作りましょうよ」というような呼びかけがなされました。最近アイドルの中から「推しメンは増やすもの」という声が挙がったのですが、そういうジャンルの発見をなすためには何かのきっかけが必要です。その工夫をどう見せてくれるのか、作り手側の手腕に期待したいと思います。
 早速というわけではないのですが、日曜日のMJにスイートプリキュアの歌い手2人が登場するとのこと。観覧募集の時に告知されたのはAKBからの2つのユニットですから、ここで大半を埋めたであろうAKBのファンがどう受け入れるのか、ももクロの出演と合わせて注目していこうと思います。
 
 発売からだいぶ経ってしまいましたが、いろいろ考えるところが多かったので書いてみました。
 ではまた。