堂場瞬一「ヒート」の話。

ヒート

ヒート

 きっかけは、箱根駅伝を題材にした同じ堂場瞬一の「チーム」を読んだからです。この作品はその続編に当たるものとして書かれたもので、題材はマラソン。
 ただ、その中身はランナーだけじゃなくて運営側にも向けられています。「新しくマラソン大会を主催して日本人に世界最高記録をとらせる」という知事の命のもとに行われる「東海道マラソン」で、世界最高をとらせるためにさまざまな手段を講じる元ランナーの県職員。日本人でただひとり世界を狙える男といわれる天才ランナー。記録に伸び悩みながらも競技生活を続け、ペースメーカーを要請された選手。そこを取り巻く人たちとの状況の変化、気持ちの揺れ、それがいくつもいくつも交錯していくところがスリリングな小説だと思いました。
 amazonのレビューとかを読むと、いろいろと突っ込みどころもあるようですが、特にレース中のランナーの心情がちょっとしたことで揺れ動く様を描くところは、レースのようにするすると読んでいけます。
 自分は「チーム」を先に読んでいたので、作中に「チーム」の登場人物が登場するところで、「うわーやっぱきたよ」みたいなことも思ったのですが、そういうところも含めて軽く興奮できるスポーツものだと思います。
チーム (実業之日本社文庫)

チーム (実業之日本社文庫)

 堂場瞬一は「刑事・鳴沢了」や「警視庁総務部失踪課」「アナザーフェイス」などの警察もののシリーズがある作家だったのですが、自分は「チーム」やそれを紹介した雑誌記事を読むまで全くのノーマークだったんですね。だから、ビジネス書ばかり読んでいた自分に、少しは小説も読まなきゃと思わせるよいきっかけになったと思っています。

ではまた。