朝井リョウ「武道館」を読みました。の話

武道館

武道館

 
 「桐島、部活やめるってよ」などで知られる作家の朝井リョウの「武道館」という小説があって、それが「現代のアイドル」をテーマにしたものということで、読んでみました。
 最初の方はなんとなく小ネタの多い小説に思えたんです。実際の出来事を引いていたり、人物名もどこかで聞いたような名前の人が出てきたりする。これを読む前はアニメの「SHIROBAKO」――これも小ネタの多い作品だったんだけど、に熱狂していたので、そっちを想像してしまいました。だから、そういう小ネタにはいちいち反応しちゃうというか笑ってしまいました。
 ですが中盤、それこそグループが売れ始めて、様々な出来事が起きて、でも武道館でのライブが決まるっていう流れの中で、アイドルであるがゆえに自分を取り巻く「もの」が変わっていく。そこが全体を通して流れている感じがするんですね。だから、武道館でライブができる、大成功、わーい! で終わる、青春小説のようなものじゃない、読後感は苦いってことは言えます。
 といっても、自分もそして作者もヲタ、それも嗜好も結構近い感じのヲタだと思うので、ちょっとしたエピソードに引っかかるんですね。興味のある人ならわかるだろう的な、あからさまな部分もあるんですけど、自分はちょっとしたワードにメモリーが反応して、実際に起きた出来事を想像してしまう。例えば「選択」というのが一つのキーワードだと思ったんですけど、ここを「パティロケを卒業してスパガに行く」という「選択」をした幸愛ちゃんが浮かんでしまったんですね。そういう意味でもヲタは読んでいくと、楽しくないかもしれないんだけど、想像力は広がると思うんです。そして、いま活動しているアイドルはこれをどう読むのかな、ってことも考えました。版元の文藝春秋の特設サイトでは、でんぱ組.incのねむきゅんが感想を書いているし、雑誌の「ダ・ヴィンチ」で乃木坂のメンバーが感想を語る企画があるそうなので、そこも含めてもう少し楽しめそうです。
 
 千奈美に、書評家の大森望がコラムで書いたところによると、作者がこの小説を書くインスピレーションを得たきっかけは、ドリームモーニング娘。の「シャイニングバタフライ」なんだそうです。
自分は納得できました。

 
 乃木坂メンの感想とかについては、後日、もうちょっと書いてみようと思います。
 ではまた。