普通じゃない普通の週末。の話

 4月10日に中野サンプラザで行われたももクロのライブ、2部構成の2部だけ見ることができたのですが、御存知の通り終演の瞬間に「ももいろクローバーZ」になってしまうという衝撃のラストでした。Zの話は後のことにして、今日はあかりんたちのことを書こうと思います。
 
 最初、以前に見た週末のイベントと変わらないような、そんな既視感すらしました。
 ホールとショッピングモールのイベントスペースという差があるとはいえ、開演前には普段のRIMIX音源が流され、開演するといつもの入場テーマで入場して、いつものように全力で歌い、それに応えたファンも普段やるように大きな声援を送る。そこには卒コンにつきものの悲壮感というものはなかったように思います。
 でも、やっぱり今日は普通じゃない週末でした。
 会場前の広場は文字通りに人で埋め尽くされ、横断幕へメッセージを書いてもらう人がいたり、コスプレをした女子が合わせで記念撮影したり、サイリウムを配る人がいたり。
 やっぱり、普通じゃなかったかもしれません。

 2部は本当にオーソドックスに、ストレートに普段のライブをやっていたような気がしています。もちろん、「Chai Maxx」の中で神無月と武藤敬司が登場するという趣向がありました。でも、普段どおりのライブをする、それが脱退してしまうあかりんに対する演出スタッフの誠意に思えたんです。ももクロの、一番ももクロらしい姿というのは、やっぱり全力で歌っている姿だと思うし、そこにファンが熱い声援を送る姿から立ちのぼる熱量に惹かれてファンになっていった人って多いんじゃないかと思います。実際、アイドルを応援する最初がももクロっていう人は結構少ないんじゃないか、という話を聞いたことがあります。自分みたいなハロヲタ、あるいはアイドル化した声優・アニソンからももクロにたどり着いた人、Perfumeのファンの人もいますし、そういう人たちを惹きつけるもの、それはその世界から立ちのぼる熱量のようなものなのかもしれません。

 開演すると普段と同じようでも、やっぱりどこか違っていて。
 それは終盤の長い長いMCで、やっぱり脱退のことに触れないわけにはいかなくて。
 ずっとともに戦ってきた戦友が違う場所に行ってしまうような。そんな感覚が漂っていました。特に夏菜子とあかりんのからみは、自分の中ではアイドル界屈指の名コンビだと思っていたふたりの間に、こうまで濃密な時間が流れていたのかと思えるくらいの感情がこもっていたように思います。夏菜子は普段からMCがまとまらないところもあったし、そこをあかりんがフォローしていたシーンがあったように記憶しているのですが、この日は涙ぐんで言葉に詰まってしまうところも結構あって。そのたびにファンから声援が飛んだんだけど、語尾を上げない「夏菜子!」の叫び声を僕ははじめて聴いたように思います。
 それで涙を流しながらまとまらない、メンバーのメッセージに対して、メンバーひとりひとりに声をかけていくあかりんの姿を見て「ああ、この子は本当にメンバーのことをよく見ていて、メンバーのことが好きなんだな」って思ったんですね。見ていないと、わからない。「私は誰よりもももクロのことを知っている、ももクロの一番のファンになります」とも。
 そこで歌われたのが「あかりんに贈る歌」。彼女たちのメッセージを詞に乗せて、途中から怪盗少女のメロディーを盛り込んで作られたスローなナンバーだったんですけど、そこから怪盗少女につないだ流れはもう普段とは違っていて。自分も感情のおもむくままに残りのサイリウムを全部折って、「よっしぁももクロ!れに!かなこ!ももか!あかり!しおり!あーりん!ももいろクローバー!」と初めてももクロmixを叫びました。

 彼女たちの中にあったもの。それはきっと仲間に対する不滅の愛情だったのかもしれません。泣いて、笑って、悩んで、起きて。きっと、この普通じゃない普通の週末を、胸いっぱいの不滅の記憶として、心のどこかに置いておこうとするような。
 そういう彼女たちは、愛しく、そしてかっこいい。
 世界のももクロ ナンバーワン! 
 なによりも、あかりん、今日のあなたは一番かっこよかったです。と伝えておきたいです。

 そして、あかりんがマイクを通さずに「ありがとうございました!」と叫んで、ステージを降りたあとで、場内のスクリーンに海辺ではしゃぐ6人のメンバーたちの映像とともに流れたのが、ビーディ・アイの「The Beat gose on」でした。