『クエーサーと13番目の柱』の話。

クエーサーと13番目の柱

クエーサーと13番目の柱

 最近、読力が落ち込んでいるように思えてならないのですが、この小説を読んだ時はかなりするすると読むことができました。
 主人公は、人気絶頂のアイドルグループのメンバーを追いかける、いわゆるパパラッチ。テクノロジーを駆使し「Q」のコードネームで呼ばれるメンバーを追うグループに参加しています。でもそれはメディアに売り込むためではなく、契約のため。グループは若き資産家に雇われた集団だったのです。その資産家がメンバーを集めるのも、結婚とかの欲望ではなく、その子のすべてを見つめたい、掴みたい、自分がキングなら彼女はクイーン。そんな歪んだもののため。だから接触はしない。雇い主は推し変も平気でする。そんなある日、そのグループに新メンバーが補充されます。それ以降、何がそうさせたのでしょうか、その「Q」へのモニタリング活動が少しづつおかしな方向に動いていきます。
 もう一つの物語の重要なキーワードが「引き寄せの法則」。『ザ・シークレット』など自己啓発ものの書籍でよく使われているものです。物語ではそれが特殊能力のように扱われるのがちょっと気になりますが、そこがまたリアルなんだかヴァーチャルなんだかの不思議な感覚が起きてきます。
 阿部和重というと、なんとなく難しい文章を書く人のように思っていたのですが、これはすごくスピード感をもって読めた気がします。そしてアイドルの描写にも競争原理とか、見る/見られるの感覚の変化、ボーカロイドが登場する、といった現代性があるのも、今の自分でも読み切れた要因なのかもしれないですね。

 それにしてもアイドルが絡むと小説でもスピード感を持って読めるっていうのは、自分の思考がすっかりアイドルに特化した頭になってしまっているんでしょうかね? なんか変な感じです。

 ではまた。