彩陽さん出演のミュージカル「ザナ」を見てきました。の話

 18日から日比谷のシアタークリエで始まった「ZANNA -a musical fairy tale-」に出演されているのですが、今日の昼の公演を見てきました。
 作品は10年ほど前のオフブロードウェイのミュージカルとのことですが、彩陽さんにとっては初めてのミュージカル出演。声優活動やスフィアのコンサートでやる「スフィアX分劇場」などと、ミュージカルは違うものだから、その点における不安半分、でもしっかり見届けていきたいという応援の気持ち半分。そんな気持ちで劇場に向かいました。平日の昼ですから一杯にならない程度の入りにとどまりましたけど、客層は当然多種多様な人たちが席を埋めました。
 舞台はアメリカ中西部の町ですが、世界が現実とは違っています。同性愛が普通で男と女が愛することが異常です。アメリカンフットボールがマイナーで、チェスの試合に人々が熱狂します。酒よりもミロの方がハードな飲み物です。そんな町のハイスクールで、主人公のザナは魔法の能力を持ち、その能力でまわりの恋を後押しする、そんな彼のおかげで同性カップルが次々誕生しています。
 でも、ある日みんなで上演したミュージカルがきっかけで、みんなの恋に混乱が起きてきます。そしてそれはザナ自身にも変化を及ぼす―― という、LGBTといわれる性的マイノリティの内容も含んだ作品なんですけど、シリアス感はほとんどない、楽しい作品です。でも「普通って何?」とか、LGBTだけじゃない、自己のアイデンティティと周囲のかかわり方とかを考えさせる面も持つ作品でもあります。
 彩陽さんの演じたケイトは優等生の役で、重要な役柄の一人ですけど、堂々と演じていたと思います。結構歌唱シーンもあるのですが、そこはしっかり聞かせるし、いい出来だったと思います。でもそれ以上に、出演者たちの演技から生まれる一体感が良くて、舞台に映えてて、音楽も明るく軽快で、そこから生まれる物語に、かなりウルウル来てしまいました。
 彩陽さんは上木彩矢さんと一緒のシーンが多いのですが、その時に「もう少し彩陽さんの背があったらなぁ」って思ったんですね。最後のカーテンコールでは皆で手をつないで挙げるんですけど、まわりが背が高いから小柄な彩陽さんだけ背伸びしないといけなかったりする。それを見てしまうと、そういうことを思ってしまいます。劇中のセリフに「僕はあなたを変えられない。でも僕らは世界を変えることができる」というものがあります。彼女の背を伸ばすことはできませんが、彼女が堂々と存在感を持って演じていることができるのも、その背の高さ故なのかもしれない。そういう風に考えるなら、そのままで、ありのままでいいのだという気持ちを今は持っています。そういった「受入れる」という愛し方が大きなテーマなのかな、ってこともおぼろげながら感じています。
 上演は土曜日で終わってしまいます。自分はもう見る時間は作れないのですが、決して難しい物語ではないので、見れる人は見に行ってもいいんじゃないかなって思います。
 ではまた。