よっしゃいくぞーなんて言われなくたって。の話

 蝉しぐれ隣は9nine聞く人ぞ
 
 夏だなぁ。
 暑かった。そしてひっきりなしに鳴くセミの声が盛り上がった雲と一緒に夏の気分を増幅させていた。
 先週末、日比谷公園野外音楽堂はそんな場所だった。

 野音9nine
 リリイベとかで彼女たちを見たことはあったけど、こうしてライブで見るのは初めて。始まる前いくつものグループが固まって盛り上がっているのを見ると、ひとりで来た自分にはなんとなく羨ましさと煩わしさの混じった感情を受ける。
 固まっているファンは多数が物販で買ったTシャツを着ている。紫黄桃青橙の5色のメンバーカラー。そして白と黒の公式Tシャツ。それとともに多いのがサッカーシャツ。最近ライブ会場ではあまり見なくなった。でも、ちょっと前は結構多かった格好だ。それを着ているのが自分と似たような世代というわけではなく、それなりの若い世代。きっと「背番号9」を着たいからなんだろう。物販も場内に移動してしまいたので、ひとりでボーと漂っているのもめんどくさいので、早めに入ることにした。隣の若い男は耳にイヤホンを突っ込んで何かを聞きながら並んでいた。

 場内に入ると売店で普通にビールとチューハイを売っているのは驚いた*1。開演後につぶれている奴いたし。ラジオ番組でリスナー招待とかやって、関係者受付が若干混んでいたけど、でも座席はしっかり埋まってほぼ満席。
 舞台の上にはドラムとキーボードがセッティングされていた。バンドが出てくるのか、自分たちで弾くのか。そして、やけに舞台上のモニターが前に設置してある気がした。電飾とかそういうものはほとんどなく、モニターと必要最小限の照明のみのセット。これにはあとで意味があったことがわかった。だが、開演前はそんなことを感じていたのだ。
 オープニングアクトベイビーレイズの2曲のあとでモニターに流れたのが、「Time to say goodbye」をBGMにした煽りV。ももクロの現場に接していると公式だったり、ファンが作ったものだったり、いろいろな煽りVを目にする。漠然とそういうものに憧れに近い感情を持っていたが、このVは自分がイメージしていたものに近かった。
 ひとりづつメンバーは入場して、それぞれの場所、といってもバンドセットの後ろで準備している。ということで1曲目は「fly」。青年館での演奏がどういうものだったかはわからないまでも、ちゃんとした形にはなっていたように思う。
 バンド演奏はこの1曲だけであった。スタッフかがバンドセットを片付けている間、その間が悪いという指摘が終演後にあったが、自分はそれをそんなに悪いとは思わなかった。確かにこのあともMCの段取り不足だったり、マイクのアクシデントがあったりするなど、タイミングの悪さのようなことを感じはしたが、それが取り立てて悪いというものでもなかった。
 2曲目「夏 Wanna say love U」からは歌のステージである。しかし、客席は今ひとつ動きが鈍い。初めての人間が多いのだろうか、それとも9nineの現場はそういう場所なのだろうか。それはまだわからなかった。曲終わりからすぐに「cross over」。客席が狭かったり、サイリウムを持ったりするから腕を振り回す人はそれほどいない。メンバーが左右に手を振るようになって客席も手を振るようになった。やっぱりおとなしいのかもしれない。
 通路を挟んだ隣の客は振りマネを繰り返す。前の方に固まっている人たちは熱心にサイリウムを振っている。自分もその姿に煽られつつ腕を突き上げる。でも、全体の空気としては熱気とか全力とかそういうものではない感じがした。ステージの上でもクールを装っているとか、振り切らないとかそういうものでもなく、自分たちが最大限できることを楽しんでいる感じ。だから客席もオイは言ってもウリャとか言わないし、mixは最後までなかった。そのあたりを物足りなく感じる人はきっといただろうと思う。でもこのグループはそういうことをしなくても楽しいものだった。
 中盤、事前にYouTubeにアップされた宣伝動画「この夏あなたは誰とデートしますか」が流され、メンバーは衣装を替える。メイド服みたいなドレスは「不思議の国のアリス」のイメージだろうか、トランプのマークが前に小さく刺繍されていた。ここからはゆっくりとした曲が続いた。あまり間のよくないMCもあった「koizora」(12曲目)だったが、曲が始まるとステージ前からシャボン玉が夜空を舞った。そのシャボン玉を通して歌う姿はやけにきれいだった。シャボン玉は最初はステージ前でしか上がっていなかったが、風の向きが変わって客席にも届くようになった。1個が自分の手に舞い降りてきた。だがすぐ消えてしまった。
 目を見張ったのはそのあと「困惑コンフューズ」からの「チクタク☆2NITE」「Love Me?」そして本編最後の曲となった「流星のくちづけ」の4曲だった。野音のステージにはボックス状の壁がある。そこにプロジェクターで映像を映して電飾のような効果を生み出した。ここでやっとモニターがやけに前に設置しているように感じた理由がわかった。プロジェクターをモニターの後ろに設置したから、投影の距離が必要なのだ。それはともかく壁天井に映すだけでいっぱい照明があるような感じもした。今回の映像スタッフは舞台上のモニターのカメラがあさっての方向を映していたり、あまり評判はよくなかったが、ここだけは本当によかったと思う。
 その映像効果もあってか、この終盤の4曲は大いに盛り上がった。自分の前の方はメンバーと一緒になって手を振っていた。終わると大きな歓声があがった。その歓声に送られて舞台からはけていった。
 暑さのせいか、アンコールは声がかかるまで時間がかかった。だが手拍子にのって少しづつ声は広がっていった。出てくる。海荷の主演ドラマ*2の関係でキョンシーが登場する趣向もあったが告知のみにとどまった。ちゃあぽんが「まだやってない曲あるよね!」と客を煽った。歓声があがる。「SHINING☆STAR」から「少女トラベラー」。この曲は知られているだけに客席は一緒に手を振ったり振りマネをしていた。
 最後の曲の前に次回のワンマンの告知がなされた、次回は12月に赤坂BRITZである。そして最後の曲は「いける、いける!」だった。
 そしてライブは終わった。「今日は満足です。でもこれで満足はしていない。私たちはもっと上に行きたいから」
 最後のMCでちゃあぽんがそういうことを言った。
 確かに間の悪いところは多かったし、なんとなく演出過多に感じるところもあった。おとなしいファンも多かったし、大成功といえる人はそう多くはないかもしれない。それでも自分は充分に楽しくて、幸福だった。そこにメンバーがいて、好きになれる曲があって、接していられるこの時間が愛しかった。

 いける、いける。
 彼女たちはもっと上に。
 よっしゃいくぞーなんて、言われなくたって。

流星のくちづけ(初回生産限定盤A)(DVD付)

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追記)セットリストはこちらから。9nine、熱気に包まれた<野音の9nine>2時間15分 | 9nine | BARKS音楽ニュース

*1:ちなみにチューハイはちゃあぽんのお姉ちゃんが宣伝しているヤツですよ

*2:メンバーも出ます。主題歌も歌います